ミステリ作家のアガサ・クリスティー作品は、何度か映画化されています。原作「ナイルに死す」に関しては今作が二度目の「ナイル殺人事件」です。監督、主演のエルキュール・ポワロ役は「オリエント急行殺人事件(2017)」同様俳優ケネス・ブラナーによるものです。
映画に関しては、彼女本人の失踪事件を題材とした、なかなか切ない作品「アガサ 愛の失踪事件(1979)」もありました。
ストーリーは、原作である「ナイルに死す」で読んでいましたし、前回の映画化1978年も劇場で見ています。トリックも犯人も知っていました。
それでも、今だから見たいと思った大きな要素は「旅がしたい」という欲望を満たしてくれそうなエジプト、ナイル川、神殿、ピラミッド、豪華客船の船旅を味わうことができそうだったからです。
そして、それは本当に美しい景色と共に、撮影技術の進歩を実感させられました。ドローンを使っているのでしょうか、スピード感のある俯瞰だったり、この角度から?というシーンを楽しむことができました。
アブ・シンベル神殿(世界遺産)って、あんなに川沿いにあるんだ!というのは、前回の作品では記憶に残っていない光景でした。そして、現在はアスワンハイダム建設のために移設されているそうです。
同じように映画化された「オリエント急行殺人事件」も旅情をかきたてる列車の旅でしたし、こういう20世紀前半の豪華な風俗や旅の情景を今求めている部分があるのかもしれません。
あまりに現実がシビアだと、現実逃避の場に旅行題材の映画は適していると思います。
そして、今まで語られなかった(原作にあったかどうかは確かめていない)エルキュール・ポワロの戦争下のエピソード。
いきなり戦場がスクリーンに現れ、ケネス・ブラナーはなぜこのタイミングで戦闘シーンや傷病兵たちを取り上げたのだろうと思わされました。かの地での戦闘を連想させます。
きっと何年か経って、わたしはこの映画の戦闘シーンとウクライナ情勢をリンクして思い出すに違いないと思います。
1978年映画化のエルキュール・ポワロは、ピーター・ユスティノフが演じ、あれ?違うよねえ、と思いましたが、今作もケネス・ブラナーは、ベルギー人のキザな探偵には見えませんでした。生真面目でした…。
アルバート・フィニーがわたしの中のポワロさんです。アルバート・フィニーは、1974年の「オリエント急行殺人事件」でポワロを演じています。
また、大きな敵役になるジャクリーヌ役が、前作ではミア・ファローがエキセントリックというか繊細で傷つきやすい元カノを演じていたのですが、今回の女優さんは野性的で直情型という感じ。
キャスティングもこのご時世を生かした多様な設定にしていましたが、あの時代だから反映される「階層」や「身分」がある訳で、そこまで今風に寄せてこなくてもいいのに、と思いました。
わたしの感じ方の問題かなと思いましたが、Yahoo映画のレビューを見たら、同じように感じている方が少なからずいたように思います。
44年前の予告を見ることができるって、すごい時代になったものです。それにしても、オリビア・ハッセーの若いこと!今作では、設定がかなり違った役になっていました。うーむ。
となると、また、原作を読みたくなってきました。古き良き語り口の「ナイルに死す」は、ハヤカワミ文庫だったかな。いまやkindleで読めるんだなあ。

BOOKOFFもチェックしてみようと思います。→(追記)ほとんど「定価」でした。人気作家だし、映画化されていることを考えると納得です。買って読むなら、電子書籍がいいかもです。ただ読みたいだけなら図書館もありですね。
若い頃に読んだミステリをまた読むことで、見えてくるものが変わってきているかもしれませんね。
では、また!
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