おはようございます。朝起きたらほわっと雪が積もっていました。一日を通して二度くらいしか変化がない寒さの秋田市予想最高気温1度、最低気温マイナス1度。くもり時々雪で降水確率60%。
最近立て続けに手に取った本が、たまたまなのかお笑い芸人さんたちの著作でした。ハライチ:岩井勇気さんの「どうやら僕の日常生活はまちがっている」は2021年9月、EXIT:兼近大樹さんの「むき出し」は2021年10月、若林正恭さんの「ナナメの夕暮れ」は2018年8月に単行本として出版されていますが、2021年12月文庫化されています。
お笑い芸人さんたちの著作が読まれているんだなあと実感しました。コロナ禍でライブや出演が激減し、出版の方を向き始めた所属会社の意向もあるのかもしれませんが、タイトルの三人はそういった事情とは無縁に「書くこと」で自分を客観視しているように感じました。
岩井さんは、今年もM-1でその才能を「動き回るという普段しない姿を最終戦に見せ、さらにきれいな引き際」を見せてくれました。
自分がやってきたこと、できないこと、だけどやろうとしてみること、などが「いらだち」や「あきらめ」などのフィルターを通し、淡々とした語り口でエッセイと短編小説に昇華させていました。
過激とも受け取れる言葉をわざとチョイスして人の注意をひき、理屈を語りながら、実はそうでもない着地点へもっていっています。
漫才のネタを自分が作り、相方は受け取るだけのデクだと言ったりします。その場は言葉だけをとらえると「キツくて」「冷たい」のですが、その後別の場面で「相方が面白く見えないディスり(攻撃)はしない。」と言っていたのを見て、長年の信頼関係に基づいた自分たちの姿を俯瞰できる人なんだなあと感心しました。
とは言っても、その瞬間の強い衝撃に応える相方も大変ですよね。
そんな岩井さんの日常生活が淡々と、時折、ひっかかるトゲを「これはトゲだねえ」と受け止めて自分の中で消化しようとしている姿がエッセイでうかがい知ることができます。
EXITという漫才コンビは、最初見た時着ている服装や小物の雑多な色彩のウズに拒絶感を持ちました。が、話すことや漫才のネタは思いのほか「きちんとしている」ことに軽い驚きを得ました。
そうこうしているうちに「事件性のある過去のネタ」があらわになって、それを受け入れ謹慎のような期間に入っていました。
が、そこから世間の「許し」というか「許容」の波が押し寄せて彼らはあっという間に時代の申し子のようになっていき、歌を出したり、ファッションブランドを成功させたり、著名人とコラボしたり、彼らの話題で満ちていっていました。
ここで過去をむき出しにするというタイミング。天性の勘なのかもしれません。この好感度があるうちに、過去を小説として吐き出す作業を彼はこなしました。
彼は、小説だと言い切っています。が、そこまで書かなくてもという幼少期の体験を生き生きと文章に落とし込んでいます。
わたしは、小学生の時、一軒家に何家族も住んでいる同級生がいました。経済的な貧しさと、可能性に封をしたままの生活を読み進むにつれ、暴力で感情や言葉を伝えようとしていた彼を思い出しました。
小説の中の少年は、環境を変え、人と関わり、学び、どんどん脱皮していきました。自分を憐れむでもなく、弁護するわけでもなく、よく客観的に文字にできたなあと思います。
そういう才能に気づかないまま、そこにまた舞い戻る人生もあっただろうに。
人は、コアな部分は残しながら、変わっていくことができるんだなあと思ったし、時折兼近さんが知らなかった単語や現象に出会った時の「ぐらり」とした揺らぎを見るたびに、彼はまた必死で勉強するんだろうなと思うのでした。
読みながら「ヒリヒリ」感が半端なかったです。
この若林さんの本は、三年前に出版されていますが、昨今の人気上昇っぷりからなのか文庫本になって12月登場しています。
若林さんの印象は「おとなしくて運動より勉強好きな男の子」だったのですが、彼が中学ではラグビーを高校ではアメフトをやっていて勉強はもうひとつだったことを知り、意外とわたしは人を見る目がないなあと思いました。今更ですけど。
この本では、彼は自分の内側に内側に入り込んで思っていること、感じたことを言葉にしています。一人でいる時は、自分と会話している、というのがとても興味を持ちました。
わたしは、他人といるのが苦手でひとりでいることが好きなのですが、クルマを運転しながら自分で自分に話してはいます。でも、もう一人のわたしを登場させることはなかった。
この「ナナメの夕暮れ」を読んでから、もう一人の応えるわたし、を持つことをちょっと試してみたいと思うようになりました。
若林さんが片頭痛で悩んで、あらゆる伝手を使い治療にあたっている様子は、同じ悩みを持つ人にとって有意義な情報だろうなあと思いました。カウンセリングを受けた時の先生の言葉もよかったです。若林さんがMCに向いている。キミがMCだと出演者がリラックスしている。という部分。
そう「あちこちオードリー」でゲストがつい言わなくてもいいことまでぽろっと言ってしまうのは、若林さんがいてくれるからなんです。相手を緊張させる人もいるし、リラックスさせる人もいる。これはトレーニングしてどうにかなることではないでしょう。
これからも若林さんがフリートークする時の、相手の反応や言葉に期待していきたいです。
お笑い芸人さんとして、人目にさらされ、評価され、思っていることと違う解釈をされたり、ほめられたり、彼らは彼ら自身を削って生きていっているように見えます。応援する気持ちと「もういいよ。頑張っているよ。」と言いたくなる気持ちになる読後感でした。
年末年始も彼らの活躍する姿を多く目にすることでしょう。月並みですが、頑張って欲しいけど、頑張り過ぎないで欲しいと願うのでした。
ありがとう!
では、また。
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